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サウンドパーツ開発部品(グリッドチョークなど)/雑談/アンプ資料室/『WE300Bを作る』を別ページに独立@〜D連載中

     特別にご注文頂いた真空管アンプ     

主として特注真空管アンプの製作例からご参考になるもののみをピックアップしています
特注品だから高価…という常識はサウンドパーツでは通用しません
全体のクォリティを重要視し、トランスメーカにもご協力頂いて広範囲な設計が可能です
オーナーのご満足度は高く、納品後は長くご愛用頂いているのがほとんどです



<2015年7月〜8月>

 RCA837と6GA4 プッシュプルステレオアンプ

  今回はRCA837も6GA4もオーナーご保有の球で「たって…」とのご要望に応じての製作となりました。
 いずれもその特徴を最大限生かすために
 ・完全バランス/ダブルプッシュプル 
 ・837はE80ccドライブ・6GA4はオーナーお手持ちの6SN7を初段プッシュプルとして使いました。
 ・ドライバー専用プッシュプルチョークを使用。 
  と言う構成で、837はプレート電圧に対しスクリーン電圧が250V以下との規定があるので<センターチョーク>は使えませんでした。
    
     


     ※製作中画像

  RCA837は比較的お求めやすい価格ですがソケットが特殊7Pですので注意が必要です。
  このアンプでは音質に優れるUL(ウルトラリニア)回路としたいもののスクリーン専用の巻線が必要で、オーナーお知り合いの製作されたものを使いました。
 電源トランスは橋本電気製で、低いスクリーン電圧のために抵抗で下げるのを避け、同じB電圧からチョークインプットとしてピッタリの電圧を得ています。
 その分電源のコンデンサーが多くなっています。
 なお、サウンドパーツは単にアンプ製作を請け負うものではありませんのでトランスの提供を得ての製作は例外中の例外、成り行き上のワケありです。
 RCA837は外観上もヒーター12Vと言うのも欧州の≪12E1≫と良く似た定格と思われます。
 音質は球の価格からは想像できないもので、やはり多極管は<UL接続>がホントに「美味しい!」と痛感します。
 RCA837はオーナーがシングルで惚れ込んだことがキッカケ、プッシュも小出力ながら豊かな広がりのあるステキなものでした。


          

  一方の6GA4プッシュ(他の画像を操作ミスで失ってコレしかありません)は、音の良さでは昔から定評がある球とは云うものの『この程度の小型三極管にファインメットOPTを使うなど凝っても如何なものか?』とやや懸念したのですが、製作にあたっては真摯にオーナーのご熱心さを反映しました。
 当然ドライバ―専用プッシュプルやセンターチョークも使ったフルバージョンです。
 回路設計通りに実際でも上手く行き、最大プレート損失13Wの95%くらいで使いました。同じ定格でも電圧は低めなので長持ちが期待できます。
 8本お送り頂いた球から4組のペアを取るべく実機でチェックしましたが、意外にもペアとして組めたのは3組で、ペア間の偏差もやや多めにありました。
三極管は本来バイアス電圧の変動で目まぐるしくプレート電流が変化する多極管とは異なり、ペアなど必要が無い…と言うのが常識ですがチョット意外です。
 ヒアリングの音は私の予想を大きく覆す十分納得の行く堂々としたもの、下手な2A3プッシュなどは全く足元にも及ばず、嬉しい誤算です。
 それも決して球から受ける「線が細い」印象などは皆無、十分主力アンプとして使える魅力あるものです。無論オーナーからもお褒め頂くことができました。

  このアンプは外観では市販シャーシにお好みのものを使ったり、バランス入力時でもボリュームが使えるようご希望があったので当店製品とは細部こそ異なるものの、費用のご報告のために部品価格明細を作るとナンと29万円を超える額となりました。ファインメットOPTがその4割近くを占めます。しかもそれに球は価格に含まれていません。
 考えてみると当方完成品アンプのE130Lは、高価なE80ccなどを初段に使っていても球込みで税込366000円です。
しかもボディ構成ひとつとっても市販シャーシーの3倍はします。
 長くパワーアンプのコスト計算をせずに、USソケットひとつ取ってもテフロン製の高級品に変更するなどでいつの間にか≪製作費≫はタダ同然になってしまっている計算! 部品総額だけの製品価格になっていたことに気付かされました。
 道理で最近は、休み返上で作れど作れど「セーカツ」がラクにならない…と思っていました。
 無論部品でも多少の利幅は見込んでいますが、当店が他と大きく異なるのはそのマージンをかなり抑えたものにしていることです。
 ご注文品を作らせて頂いて、製品価格の改定の必要性を知るとは…でもセーカツが掛っていますので<Love Three>シリーズのみ10月から2万円程度UPに踏み切ります。


 
<2014年11月>
 STC4242A シングルステレオアンプ

        

 英国STC(スタンダード・テレホンズ&ケーブルズ=現在のITT)がWE社と提携していたことは広く知られていますが、実際の球の入手は希少ゆえに高価なので難しいと思います。。
 この球は211/VT4Cとの互換性がありますので、後者なら比較的入手も簡単です。
オーナーからは、なるべくコンパクトに…とのリクエストから370W×250Dのケースに組んでみました。
211系は『小型送信管』の位置づけで30年ほど前から211/845は多くの製作記事もあり、そのほとんどは大袈裟に高圧用オイルコンを林立させ、ドライバー回路にもカソホロ段を加えるなど凝って、まるで「大鑑巨砲主義」を地で行く感じでした。でも正直申してヒアリングしてみるとギラつく感の強い音と、軽い低域を誤魔化すためか大音量で鳴らされて「WE300Bよりも良かろう?」とご自慢されることが多くて少々イヤミにも思ったものでした。
 製作は高圧ですから大変危険で、まかり間違えば死にます。一命を取りとめても心臓に大ダメージとなります。
信頼できるスジのお話しでは211/845を自作して落命した方は15年前までに伺った時点で累計11名…そのうち7名は初めて真空管アンプにトライした初心者だった…とか、ウソの多いこの世界でもキモに銘じ、間違っても内部を通電したまま開けたりしないことです。高所での使用を避け幼児のヤケドにも注意が必要です。

 さていよいよ製作ですが、1000Vの電圧を掛けて作っても20W程度もある最大パワーでいつも聴くワケじゃなし、もっと簡単に作ろうと云うのが過去にも掲載した設計手法です。
 要点を述べますと
 ・370V両波のPTをブリッジとして940V程度のDCを得、アース側にはスロースタート用に(オーナーから使って欲しいとの指示で)GZ37を配しました。
 ・貴重な球なので自己バイアスとし、自己バイアス抵抗20W/750Ωと決めました。プレート電圧900V程度の時バイアス電圧が43V前後ですので実質860V×57mA=プレート損失約49Wです。
 ・貴重な球のA級動作を超える使用を防止し、グリッド電流の暴走から避けるためにグリッドチョーク<GCH-60>を使用しました。
 ・電源部の電解は550V/390μFを4個使用し、チョークは使用せずに高圧側は100Ω、アース側はGZ37の内部抵抗をπ型フィルターの抵抗としています。これでジー・ノイズも無し。
 ・スイング電圧が43Vと300Bに比べても6掛けと低いのでEcc85/6AQ8のパラでドライブします。μ=57で内部抵抗も低く大きなプレート損失の球にパラで10mA流しても定格の6割未満。
 ・初段のB供給電圧はPTの370V両波の中点を2階建て390μFの中点と結んだ470V程度から5kΩ程度で400VまでダウンさせたところからL/Rに分けて供給を受けます。
 ・4242Aのフィラメントは75VA12V/5%可変のスイッチング電源×2個から供給します。プラス側出力に1Ω程度の抵抗を入れないと冷間では保護回路が働きます。9.9Vに調整します。
 ・ほぼ完全な直流が得られますからフィラメントの片方にハムバランサー無しでカソード抵抗とパスコンを接続します。全く問題はありません。
 ・OPTは100ミクロン・カットコアで、このコアだと実に情報量も多く、2時間程度で高域も落ち着いて低域に重心のある落ち着いた音質となります。
  大袈裟で重い100VA300〜350ミクロン・カットコアの音に比べるとドンシャリ感もない、とても音楽表現に優れたアンプになっています。
皆さんがお作りになるときには、もう一回り大きなボディを選ばないと、面積を取るスイッチング電源×2個の基板と長い電解Cを内部に同居させるのは苦しいです。
整流管の使用は必ずしも必要が無いので、電解コン×4個をおっ立てることができれば安易の組めるでしょう。ゲインはピッタリでオーナーもお気に入りです。


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<2014年5月その2>
 E130Lプッシュプル MONO構成

    

      

 E130LはほとんどがTungsram社製の1950年頃のもので多くが当時の西欧シーメンス・ムラード・クラングフィルム・バルボ・テレフンケンなど広範にOEM供給されており、ラジオ技術「オーディオ用真空管マニュアル」にも定格が出ています(そのピン配置でIC=インナーコネクタのピンは要注意)。15年以上も前にはラ技に6回も3結アンプが連載されましたが、個人的には少しムリな使用法と感じたものでした。
ただこれほど多くの大手メーカーが使ったにも関わらず不思議にアンプの回路実例が何処を探してもありません。
使えば判るのですが、最大250Vと規定されたスクリーングリッドは最大250Vで厳格に守らねばならず、さらにスタート時にスクリーン電流がやや暴れて落ち着くまでスピーカーから妙な音が1分後近く鳴ったり、中には暴走するのもあるので単純に購入して使うには注意が必要です。
 サウンドパーツのアンプとして20年以上前から採用したこの球のスクリーンを定電圧化するなど苦労してきたものの、現在ではプレート電圧もほぼ実質250Vとして少しパワーを犠牲にして使っています。
実はこの電圧がE130Lの良い面の性格が最も表現できるように思います。なおご承知の通りEとLの間に数字が入る球は定格使用で1万時間を保証された「高信頼球」です。
惜しいのはトップ・プレートであることで、もしEL34や6550等と共通のピン配置なら多くのファンがこぞって製作したでしょう。音質は1.7Aと大きなヒーター容量(多極管ではF2a系とEL156に次ぐ電流値)ゆえか大変シッカリ感とダンピングの良い低域にEL34系共通の高域の爽やかさをプラスしたとても素晴らしいものです。なお構造はプレートの支え方で2種あります。

 写真のアンプは当店製品のステレオ版が置き場所に設置できない…とのご希望でMONO×2台としたものです。そのために250V両波×200mA/6.3V×5Aの電源トランスをファインメット・コアのOPTと同じ90_角のケース入りとして特注し、ボディにはタカチのOSシリーズ2種から160W×330Dに組み直して天板は3t厚のアルミを加工しました。
やや感度が落ちるもののトップはE80ccにこだわり、プッシュ用プレートチョークと出力トランスのセンターに入れるセンターチョークも採用してギリギリに収めました。
あとはステレオ版と変化ありません。
完成後1台からは電源ON.後40秒ほどして「キューン」と15秒ほどスピーカーが鳴きました。そのチェンネルの1本の球のスクリーン電流が5mAくらいからその後は4mAほどまで落ちて安定するまでの症状です。
実は完成段階ではノイズゼロのアンプでもお届けから数日してこの症状が出るものが過去に何台もあり、それは決して異常ではなくて一現象に過ぎません。
多くのオーナーからは「アンプのお目覚め…」とご理解頂いており、当方も最低2年の保証をしています。先日1999年製のアンプがメンテで戻って来たのですが、E130Lは全く新品のままでした。




<2014年5月その1>

 ライン専用プリアンプ
  実際にご使用頂くと臨場感や奥行表現がとても増えるこをご実感頂け『不思議?』があります

  

  

 ≪Love Five≫ハイ入力専用機では横幅が入らない方のための製作
 全て手加工でキズなどは付けないのは当然ながらも細かな部分についてはご理解ください。1台毎の製作ですので画像とは一部配列などが異なる場合があります。
 アルプスRK50高級ボリューム付き・バランス入力付き
  ⇒ゴールド¥199800(本体価格185000円)/ブラック¥199400(本体価格180000円)
 


<2014年2月>

 WE102LドライブWE101D プッシュプルステレオアンプ


   

 うかつにも正式画像を撮り忘れたので底側からのみお見せします。
表題の球を用いて450W×300Dのやや大型ボディに収めました。
オーナー保有の球/ソケットとSiemensのオイル/フィルムコンで製作、初段も出力段もプッシュの『ダブルプッシュ』、出力はA級1W程度(実効プレート電圧180V×12.5mA・RL=10kΩPP)ととるに足らないが全くそのような音では無いのは102Lにプッシュ専用のプレートチョークと101Dにもグリッドチョークを奢った球の価値に相応しいアンプだからか…無論OPTはファインメット、電源はチョークインプットで250Vから得ています。球8本の中央4本が102L/ 両端4本が101D。良く101Dを知る方ならAB1球で動作させれば5W近くも取れるのはご存じ…でも製作依頼ではオーナーご指示のA級で…となります。
実は外観では102Lにオーナー提供のシールドカバーをしていますが、全く必要なくてノイズもゼロです。
 全てのフィラメントはスイッチング電源、102L(2.5V×0.25A)は3.3V用5%可変でプッシュを構成する2球はカソード結合のために共通、2.45VになるようCRでπ型フィルターを通してよりキレイなものに。
101Dも同様5V用5%可変からそれぞれの球独立でπ型フィルターを通して4.45Vを得ています。スイッチング電源は長野の60Hzから50Hz地域に出荷しても調整の要が無く、球を入れ替えても同じ電圧が保証できます。しかもパワートランスに巻線を設けるのに比べて容易に多くの球に省エネで供給できますからアンプそのものの発熱も抑えられます。
 オーナーからはSupravoxのフィールドスピーカーシステムもご注文頂いているので、1Wもあれば大音量です。
ただ102Lのフィラメントは考えれば12AX7の約半分の電力で部屋を真っ暗にしても点灯しているか判らないほど、そのためか電源ONからしばらくは音が「寝ている」感じですが、30分程すると全く異なる印象に変化します。業務用はON/OFFなど頻繁に行うハズもなく、アンプ全体としても極めて消費電力が少ないので一旦聴きだせばONしっぱなしが良いようです。

 ちなみにフレームは市販のタカチSRDSL-20で天板は用いずに別の3_厚硬質アルミを手加工、穴加工と塗装だけで2日〜3日を要し、手間賃はステレオで9万円と大工さんの日当と同じです。
アマチュアの方に作って貰えばもっと高く取られるコトも最近は有るらしい。それで音が気に入らない…とかハムが出る…とかトラブルになって友情にヒビが入ります。
かと言ってホイホイと頼めるプロは減って、居られても「センセイ」は芸術家肌だから『俺は日当では仕事しない!』と云われて完成するまで幾らか判らない。
 このアンプでも主要トランス(PT・CH・Finemet OPT×2個)だけで17万円近いので球やソケット無しでも40万円近い高級品になります。
大工さんは建物を保証し、私はアンプを保証せねばなりません。
そこでご提供の球や部品での製作は正直のトコロ気が重く、今後は積極的にはやりたくないと考えています。
タマにが好きで今まで大枚をはたいて買ってしまったコレクターの方は、作り手不在になる今後、アンプにできる能力が無ければコレクターを卒業されることです。




<2013年11月>
 PX25Push-Pull/ステレオ構成
  長期にこのページをお留守状態にしていましたが、格段珍しい球も無かったので略していたら1年を経過しました

 K氏のご依頼での製作、真空管は全て同氏が長く大切に保存されてきたPX25/VR40を使いました。
ドライバ―段はMT管の王者の風格と構造を持ち、音質にも大変優れるE80ccで、サウンドパーツが今年新たに開発したドライバー段用プレートチョーク(E80ccの後ろ)を使いました。
プレートチョークは本来シャーシー内に納めるタイプなので、パーマロイケースの合わせ目をパテで埋めて何度もアクリルスプレーを吹いて外観を整えました。
 このプレートチョークは最大5mAまで、スイング電圧はプッシュで80V程度の使いやすい性能でペア33000円です。
別に300Bプッシュなどの大きなスイング電圧用は最大23mAのカットコア製でペア45000円です。
プッシュ用のプレートチョークがプレート抵抗と大きく異なるのは、仮に片方のプレートだけからコアをスイングされた…としても他方のプレート回路もスイングしてしまうワケで、実際には位相の異なる両プレートからの合成信号が全く抵抗の時とは異なる歪成分を排したものです。従ってEL34や300Bなどグリッド電流の流れにくい球ならグリッドチョークは略しても同じ効果が得られます。
 回路はサウンドパーツ定番の超合理的なもので、どなたが考えても納得の行く『シングル2段アンプの回路を水面に移したような』プッシュプル、入力用の<GCH-4>プッシュプル反転チョークで入力信号をプッシュプルに変換する『完全バランスWプッシュプル』です。
 最近の当店製品と同様ドライバ―段もプレートチョーク化を図り、PX25がグリッドの弱い(=グリッド電流が流れやすい)球なので<GCH-60>出力管用グリッドチョークを用いた、コレ以上安全でゼイタクなアンプは作れない構成です。なにせ全回路を通じ信号系の抵抗はカソード抵抗しかありません。
 出力トランスは無論ファインメット63VAで当店のEL34などと共通です。
余談ですが、今秋某トランスメーカーが店じまいされました。
最終の注文が出来る…と云うので知り合いの方が845PP用に8万円を超えるOPTを注文した…と聞いてビックリ、当方なら同じ100VAのコアでフィアンメット・コアでも税込68000円…300ミクロンのオリエンタルHi-Bのドンシャリ系の音がするコアと比較にならない遥かに高級なコアの製品です。
 一方関東の真空管ファンの大きな組織での集いで、著名なトランス販売店製のファインメットのトランスが他のコアとの比較ヒアリングに使われたそうで、何とそれは20万円弱!の価格だったそうです。
当日ご参加された方のお話しでは金額は単価だと思いますが仮にペアでも何かの間違いじゃないか?…とお尋ねしたほど、本当に高価なコアなら<コバルト系アモルファス>と云うのが在るのですが、それでも多分100VAなら@20万を切る…と思います。ちなみにトランスの製作はイマドキ人件費が一番大きくて、コア材料は高いと云っても当店の場合でも価格の半分くらい…だと思います。
 何を隠そう…と威張るほどではないが…ファインメット・コア製のOPTを始めて製品に搭載したのは当サウンドパーツ、今から10年以上も前です。同時に製品に標準で搭載するのも恐らく当店のみです。
ファインメットは直流を流すと磁気飽和特性から通常のカットコアに比べて低域に影響してしまい、直流を流すシングルアンプには不向きです。
これは本当ですから著作記事やトランス販売店のハナシを鵜呑みにはできません。例えば300Bのようにシングルで60〜80mAを流す場合はファインメットやアモルファスは300VAくらいの大きなコアでないと低域での最大パワーは取れません。そんな大きなコアのファインメットを使っても大きなコアは音が鈍重でツマラナイだけです。
シングルにはトランスメーカーが…存在を知っているのに作ろうとしない…100ミクロン・コアが音質の良さではシングルに最適のコアです。
ちなみに10年以上前の当時、日立金属は特別な事情からテクトロン以外ではファインメットをオーディオ界に売ってくれなかったらしく、テクトロンと当店が単品製品の販売と製品搭載を続けた結果その良さがウワサとなって徐々に火がついて今では自作派でファインメットブームになっています。30年間良いものを追求してくると、フィールドスピーカーとかファインメットも認められるようです。

 ハナシを元に戻しましょう。
プレートチョークと出力管のグリッドチョークとは結合コンデンサーを通じて交流的にはパラなので、当アンプのように絶対の必要から併用した場合では35Hz以下の特性が僅かに劣りますが、ヒアリングでは一切それは気になりません。
 PX25のフィラメント点火は5V/30VA・5%可変のスイッチング電源を使いました。フィラメントは冷間時は抵抗値が小さいのでラッシュを避けて大きいVAの電源を使い、さらに3A用サーミスタを使ってピッタリ3.95Vに設定しています。そのためアンプの発熱は大変少なくてノイズはゼロ、直熱管アンプはハムが出る…などと云うのは当店製品には通じません。
またスイッチング電源の寿命も、過去にGM70アンプで使い始めて今も何ら問題はありません。
 オーナーは大変気に入られて、まだお手持ちのPX25球でのMONOアンプのご注文を頂戴しました。



      

    




<同月某日>

 Supravox ≪215RTF64Bic≫ユニッ×2発スピーカーシステム

   
  
   

 愛知で現在新築中のクリニックでの館内用に設計したものです。音響治療や院内コンサートに使用されます。
このユニットの名称の由来はフランス・スープラボックス社が1964年にフランスの<ラジオ&テレビinフランス>と云う家電メーカ用に製作したWコーンのユニット、エッジはフィクスト(=コーン紙のまま)で、とてもフェライト磁石とは思えない素敵な音がします。店内デモ用の僅か5.5W/RMSのE2dプッシュでも大音量、更に新しく加わったJ&J300Bプッシュなら堂々の音、税込価格@43050円とお求めやすく、8Ωですが恐らく抵抗線ボイスコイルは採用していない…と思われ、高能率で24t厚のロシアンバーチ製のこの箱(普段はコーナーラック内に収容)で爽快で低域も十分伸びた音質です。国内の同径ユニットの鼻をツマんでいるような声の表現からは想像もできない音楽性有る音質で、エージング後が楽しみです。
 この箱でこのユニットとの組み合わせで大きな成果が得られたのは600W×900Hのバッフル面積もさることながら、両ユニットの間隔とか三角形と云う特殊形状、ユニット配置…など色んな要素ががありそうで、来春に販売を控えるフィールド型の165EXC×2発システムの設計にも応用します。
165EXCの場合は幅を抑える現代システムのような構造を考えていましたが、日本の家庭事情優先かバッフル面積優先か悩んでしまいます。
165EXCとこの215RTF64Bicも選べる可能な限り安価に抑えた箱とし、スピーカー投資に大枚のお札の投資は躊躇しつつ今のスピーカーには魅力の片りんも感じない正当ファンのご要望にお応えしたい…と思います。



2012年9月7日
 VT-4C/211プッシュプル
     

    

 気付いてみれば丸8ヶ月以上も特注パワーアンプの掲載を怠っていました。
実際にはこの8ヶ月の間に、多くのプッシュプルアンプ…オーナーのご予算に合わせて17万円から40万円を超えるものまで…は勿論、欧州古典球のアンプやラインプリなど多くの台数を手掛けていますが、私自身特注品に慣れっこになっていて皆さんにご参考になるようなものを…と云う好材料が無かったのと、お店でお使いになるのでこのページには掲載を遠慮したものもあります。
 プッシュの製作は前にオーダー頂いた211/SE(Single Ended)のオーナーから「どうせならヒトの持たないプッシュを」とのご意向からご注文を受け、SE版は別のオーナーに譲渡されました。
今回はプッシュなので出力トランスには最高級のファインメット・コア63VA/8kΩを使いました。
パワートランスのB巻線は340VCT付きです。ブリッジ整流ですが、トランスのCTタップを接地するプラスマイナス電源ですから対アース間では+側と−側の両波になり、バイアス側の高圧マイナス電圧とプレート回路の高圧プラス電圧の両方に触れない限り「生命の危険」にまでは至らないと思います。
また使用する電解コンデンサーの最大電圧450Vを実際に超えないのでコンパクトにできます。無論ウッカリ球を抜いての電源投入は危険です。
 フィラメント点火にはコーセルの75W/12V・5%調製ボリューム付きスイッチング電源を用いて9.85V、フィラメントの−側に4Aのサーミスタを入れて「冷間突入電流」を避けました。
これを在来のようにトランスにフィラメント直点用5.5A×2巻線を付けると高価になるだけでは無く、トランス自体の発熱がバカになりません。
仮に低損失ダイオードからDCを得ても10V/3.25Aもの電流はフィルター回路からの放熱だけでも大変、損失の極めて少ないスイッチング電源は重宝で、ヒアリングでも全くノイズはありません。
今のサーミスタの信頼度は高く、マイナス側に入れる理由はベテランの方なら納得、このような球のプッシュのフィラメントのバイアス回路ではハムバランサーのような余計な回路は避けてフィラメントの+側から直接バイアス抵抗(自己バイアスです)を入れます。この方法は2A3でも300Bでも完璧なDC点火が得られれば恐らくは問題が生じるハズもないでしょう。
でもこの辺りのオハナシはいろんな理論のあるトコロ…今回は省略。
 なお、スイッチング電源から電源側にノイズが有る…と云うのも最近は家庭に来ている電源の方が疑わしい…時代なので、かって問題だと思ったことはありません。
ただ、電源基板の入力に近い部分に配された、基板に水平取付の銅線が露出する小型トランスはノイズ発生が多いので、入力に近い設置の場合は上側をパーマロイで被います。

 211はこの設定の場合でバイアス電圧は50V程度、ドライバー球はEcc85パラ(本来は1ユニットでもOKですが見映えの問題)で十分駆動できます。
例によって入力反転グリッドチョーク<GCH-4>で入力でいきなりプッシュ変換し、今回は初めて特注のプッシュ用プレートチョークを使用しました。
これは300Bプッシュ用に用いて大きな効果を認めたもので、211プッシュでは回路上ほとんど固定抵抗が無い単純なものです。
無論出力トランスには<センターチョーク>を入れて完全なAクラス動作として音質を優先したのは申すまでもありません。グリッド電流を流さない設定なのでパワーは少し控えめでもそこは211です。
 出てきた音は小型送信管からは想像できないとても落ち着いたもので、単純な構成の古典直熱三極管のシングルでは到底出ない情報量の多さと奥行き表現があります。
 現在サウンドパーツでは300Bプッシュの限定製作を受け付けていますが、その音の良さのヒミツはドライバー段プッシュプル用プレートチョークであり、211でも効果は十分確認できました。
無論この部品は市販品にはありません。
 もう作り尽くした感のある<完全バランスプッシュプル>ですが、ドライバー段用プレートチョークの登場で躍動感やまとまりの良さを聴くと、リークムラード型やPK分轄型でNFBを掛けたプッシュの貧弱な音には絶対戻れません。
 WE300Bでの使用も圧倒的に音が良くなりますが、それはドライバー球の影響から来るものでもあります。
当アンプはアッサリした外観からは想像できないほどシャーシー内はチョークやコイルで一杯、スイッチング電源は側面にスペーサーを介して取り付けてあります。
 音質がまた1歩前進したことを感じます。


<2011年12月30日>

 
6550Aプッシュプル/入力5系統+バランスボリューム+メインボリューム付き
 ファインメット出力トランスの採用で内容は超一級品となっています
  ※市販「高級アンプ」でも高コストのファインメットコア・トランスを採用しているメーカーはありません


 

    
    
ファインメットOPT搭載・出力管と背面端子類はオーナー手持ち部品・グリッドチョーク結合・A級動作用センターチョーク搭載28万円

 今回もオーナーお手持ちのGE6550Aを使用、現在ご使用の同じ6550使用の海外製セレクター・ボリューム付きアンプの音質のご不満からご注文頂いたものです。6550/KT88となると、家庭ではほとんど実力を発揮することの無い60W以上のアンプをリークムラード型のNFBアンプとして設計し、パワーを得るためにプレート実質電圧を500V 近く設定するのがフツーです。
 それではどれも似たり寄ったりの音ばかりで、音質は硬質で乾いた荒削りな印象が強く、ロック系やドラムなどには向いても声楽やバイオリンではイマイチのシットリ感の欠ける印象です。
 サウンドパーツの過去の製作ノーハウでは<実質プレート電圧350V以下・ウルトラリニア結合>で30〜35Wの無帰還アンプとしてダブルプッシュ方式で製作すれば、下手な300Bシングルよりも高域は美しく清楚なイメージも芳醇なイメージも出せます。 
 今回の設計は電源電圧は整流素子直後で375V⇒抵抗50Ω⇒センターチョーク⇒ファインメットOPT…と落ちてきて最終のプレート〜アース間電圧は356V、そこで自己バイアス抵抗には400Ωを選んでバイアス電圧32V(=プレート+スクリーン電流合計80mA)を得ています。つまりパワーアンプとしては入力から単純に32倍程度のゲインと、32Vが必要かつ十分にスイングできるドライブ回路を考えれば良いのです。これを安直にリークムラードでの全3段アンプで製作すると、仮に初段にも位相反転段にも6FQ7クラスの低μ管を選んでも増幅段だけで250倍以上のゲインがあり、8分の1までの大きな負帰還を掛ける必要が生じることになります。その設計は本来素人の手におえるものではなく、月並みに初段と位相反転段とを直結するなら本当は綿密な設計手法が必要なのに、チマタに溢れるキットなどはかなりこの部分が怪しくて、素人さんはダマせても我々には欠点ばかりが目につきます。直結で長期間や球の交換などでの安定は事実上難しく、音の良し悪し以前の問題と云えるでしょう。
 他はさておき、今回はEcc85なら手慣れて簡単に設計できるものの、そこはひとひねりしてノーハウを蓄積も兼ねてEF86/6267を3結で片チャンネル2本づつ使用することにしました。良いEF86は安くは無いので少しゼイタクです。
 増幅管のプレート電圧とグリッドチョーク結合の組み合わせでは、多くのデータ分析で増幅段のプレート電圧は出力管のバイアス電圧(=スイング電圧)の最低3倍〜4倍が必要、その辺は微妙に聴きながら決めて測定でチェックします。今回のEF86のプレート電圧は約135Vに設定しました。
 電源フィルターに1000μFと云う大容量のコンデンサーを2個使用するだけのこの手のアンプではチョークは不要、今回も50Ωの抵抗1個で十分でした。このフィルター後のコンデンサーから両チャンネル独立のセンターチョーク(シャント可能)と増幅段のB電源を供給しますので十分大きなプレート抵抗を使え、単管での歪率も大きく改善されますが、初段からプッシュ構成なら歪はほぼ無視できますので音質でも格段に優れます。
 製作ではシャーシー奥行きが230ミリと狭いので横幅430ミリのものを選び画像の配置となりました。
またアルミ天板の横幅が広いのは重いトランス類を支えるのに不安があるので、各トランスを止めるビスに内部ほぼ全幅に亘る20×40/3tのチャンネル材を一緒に止めて補強としています。

 出てきた音は6550の一般的な印象とは大きく異なるもの、ブラインドテストならどなたもが優秀な古典三極管の音をイメージされるものです。
ハープ・女性ボーカル・ドラムスからフルオケ・JAZZベースなどをスープラボックスの215EXで聴きましたが素晴らしいスピード感と音場の表現力があります。30W程度のパワーでCD直結のボリュームで10時以上上げることは家庭では少ないと思います。
オーナーからは後日…
解像度/臨場感/音質/歪み感?ともに素晴しく仕上がっており、満足のいくものです」
 
との有り難いご感想を賜り、今年最後の特注アンプでしたが音楽を愉しまれる素適なオーナーの下、長くお仕事してくれる…可愛い1台となりました。
  


<2011年12月4日>
 最近製作したもの

   
   EL34プッシュプル

 お馴染みのEL34プッシュで過去に無数の作例があるのは勿論、サウンドパーツ製品の定番アンプでもあります。
でもご予算もあり、だからと云ってクォリティ面では製品版と差別化せず、音質面はオーナーの細かなご希望に沿ってノーハウを生かすにはかっての製作経験が多いほどご希望に沿える…と云えます。出てくる音の味付けを微妙に整えるのは<完全バランスPush-Pull/UL接続>だからこそ可能、NFBアンプでは出来ない芸当です。
 「頭上のハエ」を追うことなくまだ古典三極管シングルアンプだけ…とか、LUXみたいにコストを全く掛けていないのに「神話」で「コレが真空管アンプ」とお考えの方は、本来真空管アンプが持つもっとリアルで豊かな部分とか、歪感が全くなく無くて高域もキャンつかない多極管UL結合アンプの良いものを聴かれると、その頑固な宗旨も変わると思います。細身美人も豊満な美人も素敵なのです。
中でも欧州製EL34は、作れば作るほど単純評価は失礼な気もし、無限の可能性が在るように思います。ただ「似て非なる」中国球は数ヶ月のヒアリングでも音楽性ではダメ、カネをドブに捨てるようで…アレでは幾ら工夫しても良い音は得られず軽薄に終始します。
 当アンプはドライバー段は贅沢にオーナーお手持ちのE80cc、EL34もRFTオリジナル球のUL接続で、自己バイアス抵抗は270Ωとしてプレート+スクリーン定格の85%程度まで電流を流し、OPT中点に<センターチョーク>を入れて完全な定電流A級動作として設計しました。やや低めのプレート電圧なのでパワーは20W程度ですが、センタ―チョークの効果もあり、実に豊かな音楽表現でファインメット出力トランスの情報量がよく効いています。
 今回は内部画像もお見せしています。手慣れた者の手にかかれば見た目を意識はしないもののとてもシンプルです。
 出力トランスの情報量の差について…ですが、店内のフィールドスピーカーシステムの反応の良さから判断は一聴して判り、フィンメットや100ミクロンコア、それにプライトロン社のトロイダルはやはり最高と云え、一般のカットコアやEIコア製には独自の音が有っても情報量の差はいかんともし難いものです。
どうか真空管派はタマ自慢ばかりせずに、そのタマの最良部分を引き出すトランスにもご予算を掛けてください。そうでないと何台製作しても本当の良さを判らないまま無駄な投資の繰り返すことになります。MONO構成にコダワルよりステレオ構成で余る予算をトランスなどにつぎ込む方が良く、当アンプはその典型と云えるでしょう。。
アンプの音質差のチェックはハッキリ云ってTANNOY/JBLでは個性が出てムリ、良いフィールド=励磁スピーカーがリアルさに勝ります。
著名ブランドスピーカーのオーナー向けにアンプを製作するには、アンプ自体が本来持つ素晴らしさを発揮させるより、スピーカーのクセを考慮してそれなりの「手加減」をします。ブランドスピーカーは楽器と声のリアルな再現よりも、スピーカーの個性を聴いてしまっている方が多いのです。
結果として大量に出回る工業製品としてのブランドスピーカーを持つのがAUDIOでそんなに有意義なのか…スピーカーも製作する者として理解できない部分です。おっとこの辺の話題は当ページには馴染まないのでした。

       三極管チェックアンプ

  このアンプは多数の古典球をコレクションしている方のご希望で、球の音質も含めてチェックする目的から製作したもので、OPTはオーナーの手持ち品のTANGO<U-808>です。
欧州UFソケット球からサイドコンタクト球のチェックなども可能で、画像にはありませんが豊富な欧州球のほとんどと米国UX球まで対応できるよう別に2種のアダプターも作りました。
 ドライバー管も出力管もカソード抵抗を自由に変化でき、出力管のフィラメント電圧やプレート電圧は外部のDC専用電源から供給を受けます。
回路が簡単なワリに内部は極めて複雑、ケアレスミスを避ける幾つもの安全策と豊富なチェック端子や電流計を備えます。


 下欄の7月以降、楽器用のベースアンプ/ベース用スピーカーからアメリカ輸出向けイコライザーアンプ(OEMなので画像は掲載できません)まで、実に多くの特注品の製作と、一般の真空管アンプのメンテをさせて頂きました。
 楽器用アンプやスピーカーは、ライブを聴きに行くと何だか音が詰まっている印象が強く、とてもそのミュージシャンの実力が発揮されているとは思われなかったのです。 その私の提案を受け入れてくれた或るベーシストが使い始めてくれたので、お手渡しから40日を過ぎた頃にライブに行くと別人と思うほど乗りまくります。その音は一番後ろの客席までもよく通り、半導体ベースアンプの800Wよりも遥かに音が飛んできます。
真空管アンプが「音が通る…」と云うのをこれほど身を以て体験したのは初めてです。つまりベース演奏者の方はそれが面白くてたまらずにバンバン弾きまくったというワケで、他のミュージシャンも、勿論客からも大いに受けてヤンヤの喝采でご機嫌でした。



<2011年7月7日>
 LCR型フォノイコライザー

       

       

 アナログ盤の音の良さと、当時収録の音楽の品位の高さからご希望が多いのがプリアンプと独立したイコライザーアンプのご注文です。
具体的には
 ・LCR型…RIAA/リア再生カーブ専用のインダクター(コイル)を搭載するもので、インダクターがそのヘンリー数によってローパスフィルターとなる性格を利用する最  も高度なもの。
 ・複数のカーブを再生できるCR型イコライザー。
 1955年にRIAA再生に統一されるまでのレコード制作会社固有の再生カーブ(FFRR/Old RCAなど)を複数搭載。
 サウンドパーツにはLCR型は25年、CR型複数再生対応も既に20年近く製作してきた多くのノーハウがあります。
特にLCR型は、信号が抵抗でロスされることと異なって主要部分にコイルを使いますから情報量で圧倒しますが、音質的にも理論的にも問題の多い600Ωタイプとは異なり、当方の製作するのは20kΩのハイインピーダンス型で、わずか2段の増幅回路中に素子を挟むだけで全体として高効率な回路で作れます。
<Love Five>プリでは多くのアナログへのコダワリを持たれるファンがこのタイプを注文されます。
 一方複数のターンオーバー(低域補正)とロールオフ(高域補正)カーブを有するCR型イコライザーは1955年のRIAAへの統一(多くのレコード制作会社はスグに従ったワケではないらしい)以前のレコード制作会社固有のイコライザーカーブを反映、各社指定の再生カーブに応じる正しい補正を行いますのでコレ無しでは貴重な盤を保有する意味が無い…とも云えます。
 画像はLCR型で、約60%のご注文はMCトランスの搭載も希望されますが、画像は搭載しないもので入力は2系統となっています。
要は<Love Five>のイコライザー部分ですが、入れ物も電源部も必要ですからボリューム以降のライン増幅部を持たないプリ…とも云え、簡単ではありません。
イコライザーアンプはフォノ入力から当イコライザーアンプを通してお手持ちプリアンプのLINE入力(AUX/TUNERなどのHi入力)に入れます。
 今回製作のものは使用真空管にEcc85を用い、初段はステレオで1本、2段目は送り出しのインピーダンスを低くする目的からパラレルとなっています。SRPPでの送り出しの方が簡単に思えますが、実際には球そのもののノイズが乗りやすいので、現在ではプレート抵抗負荷の並列使用が有利だと考えています。ヒーターには突入電流の防止を図った上でスイッチング電源を用いています。
 音質はLCR型の最大の特徴でスクラッチノイズが不思議と気にならないのに高域の伸びが良く、情報量はやはりRIAA再生では最高のイコライザーと申せます。
 一方、画像は掲載しませんが複数再生カーブを備えるにはCR型が相応しく、これをインダクターやろうと思えば10数個のコイルが必要で事実上製作は不可能です。CR型の回路はターンオーバー(低域側)で4ポジション、ロールオフ(高域側)で5ポジションの切替をするものを基本として製作可能です。CR型は作り方が無限にありますが、Ecc83のような高インピーダンスの球には不向きで音質面でも感心しません。それは抵抗値に高いものを使う結果「音が曇る」からで、Ecc85をイコライザーに用いるのがサウンドパーツ独自のものです。
 いずれの場合もご希望に沿ってお見積りしています。


<2011年4月8日>
 VT4C/UV211シングル・ステレオアンプ

        

         

 これら1000V近いプレート電圧の球を使うアンプは、製作中のケアレス・ミスで一瞬にして帰らぬヒトとなる覚悟が必要、決して気軽お引き受けできるものではありまません。ただ、今まで何年も当店のアンプやスピーカーなどをご愛用頂き、「いつかは…」と真空管を保有していた方からのご依頼となると、やはりソコは人間関係、「たって」となれば製作をお受けせざるを得なくなります。失礼ながら「気心の知れない」初めての方のご注文はお断りします。例え自己の不注意が100%原因であっても、事故を起こせばお互いの不幸でご家庭でも『自己責任』での管理をして頂くようお約束頂かない限りお断りします。
 当アンプのオーナーは約20年前の中学時代からお通い頂いており、今までのご自作数も多数に亘る方ですが、ストックされたVT4Cを使って前回の<F2app>のシャーシーに載せて製作できないか…とのご相談を受け、テクトロン100ミクロン/100VAコアを使う少し贅沢な仕様とし、フィラメントにはスイッチング電源を使うことでご納得頂いての製作となりました。電源トランスにはPX25用の350V両波用巻線をセンター接地としてプラス/マイナス電源で約900Vの電圧を得ることとし、シャーシー間の各部絶縁性と製作時の安全にも考慮しています。
 つまりプラス側電源にはダイオード出力にダンパ管<6AU4>を入れ、ドライバー球EF86にもユックリと電圧を加えます。一方でVT4Cのフィラメント/グリッドと自己バイアス抵抗はマイナス電源にてトータルで高圧を得ます。幸い使用したコーセルのスイッチング電源は耐圧が500Vあり、取扱いに十分な配慮をすれば絶縁性に問題はありません。
 ドライバーはEF86/3結で、このままではバイアス電圧約50Vをスイングできませんのでグリッドチョーク<GCH-60>を0.47μFを通じてセンター入力して2倍のゲインを稼ぎました。VT4Cではそのムカシ、とても大袈裟な構成のアンプが一杯キットとして売られていたことをご記憶の方も多いでしょう。また高圧を扱うことで豆腐を立てたような大型オイルコンデンサーを林立させて40kgを超えるアンプを作って自慢された方も一杯知っています。そのほとんどにはタンゴの巨大なOPT<Xー10S>が搭載されていて「大鑑巨砲時代」的アンプの代表でしたが、今回使用のテクトロン100ミクロン/100VAトランスも実はコアボリュームは<X-10S>と同じ、コチラの方がウンとコンパクトで高価なコア材料です。つまり旧来のOPTの中味は充填剤でもあったことが判ります。冷静にスペックを見ればVT4Cは300Bに比べても<μ>が3倍以上もあるスイング電圧の低い球でプレート実質電圧が850V位なら2A3程度のスイング電圧です。従って大層な構成をしても音質的メリットは少なく、今回のように2段構成とすること良い特性と音質が簡単に得られます。無論バイアスを固定バイアスとしてもっと大きな出力も狙えますが、今回はメンテが楽なのとご使用スピーカーがドイツ・フィールド型が主なので全くその必要はありません。
 アンプ完成時にはやや高域よりに感じた音質も、30分ほどで重心は大きく下がり、数日の試聴で情報量も100ミクロンコアに感じる奥行き方向の表現力も抜群で、この手の球を聴くといつも感じた「トサカから出る高域」のイメージは全く無くて透明感抜群です。オイルコンだけで構成するシングルアンプではOPTの直流抵抗と電源部出力のオイルコンの容量不足から低域時定数に問題があり、折角「」大鑑巨砲」的に大きく重くカネを掛けたワリには低域が薄いものも多くありました。その音質が211の音だとの印象を持つ方には、このアンプの大変親しみ易い音色を聴くと驚かれることと思います。
このアンプでは大変内部密度が高くて製作には苦労しました。出力管を除く費用は30万円未満に収まっています。



<2011年2月18日>
 F2aプッシュプル
 
 かっては家1軒を超えると云う莫大な金額をオーディオに費やされた苦い経験をお持ちで、数年前からは「Sachsenwerk4発システム」からプリ〜メインアンプまでサウンドパーツ製品をご愛用のお客さまから、自身保有されているSiemens<F2a>をメインにE80ccパラレルでのドライブ・整流管Z2c…とコダワリのアンプを作れとのご要望をお受けしてややゼイタクにFINEMETの出力トランスと100μカットコア<センターチョーク>完全バランスプッシュプルMONO×2台の製作となりました。F2aは欧州の業務用A級アンプでは300Vのプレート電圧、当方設計はUL接続で16W(ミュージックパワーは2倍の32W)程度を目指します。1Wでも大きい音と感じる「4発」、家庭ではピーク30Wを超えるアンプは能率90dB/Wくらいのスピーカーならあり余る出力で真空管アンプならコレ以上は全く無意味と言いたいほどです。
 カソード抵抗は単管当たり150Ωで12Vに達しますが、内スクリーン電流が9mAを超えますので実質プレート損失は300V×70mA=21Wで定格30Wの70%です。
 店内でも円熟期を迎えた(昨年だけで5組のオーナーが増えました)スープラボックスの2ウェイでもノイズは無論ゼロ、小音量の良さは当然としても大音量でも一切崩れないで「ツァラツストラ」は勿論OK、フルオーケストラを従えたムターのバイオリン(2003年9月プレヴィンとの共演のCD)は何とも聴かせどころ十分でコルンゴルトの曲にも脱帽、JAZZではBLUE NOTEのロン・カーター<The Bass and I>もバシバシと来て抜けの良さ抜群が愉しく、思わずスピーカーから最も離れた壁際に立って聴き入りました。オーケストラは奥に広がる一方でJAZZのサクスホンは飛んできます。NON-NFBのアンプはボリューム回転角に忠実にエネルギーを身体で感じることができ、音量を上げるとやたらと高域ばかりがウルサクなる傾向のパワー優先NFB真空管アンプとか半導体アンプとは表現力がまるで異なります。
 球は全てオーナー保有、部品代と製作技術料は〆て@225000円×2台。

 
 F2a用オリジナルソケットの取付に工夫が必要なことから別のアルミ板に取り付ける
 
 トランス組み付け前。山本音響のZ2cソケットは取付方法と各ピンの取付法を改良して使用

 

 90%の部品が取り付いた状態…ここまで来ればMONOなら配線は1日で終えるのがプロ

 ワイアリングを単に美しく見せるだけの努力は必要無い…良く整理し信号系と電源系は分ける

 2台とも完成!保護のポリを取るのはオーナーの権利。奥は弟のE2d

 4V/4AのZ2cと6.3V/2Aと傍熱球最大のF2aのヒーターはこんなに輝く

 シンプル・イズ・ベスト…それでいてバランス入力/RCA入力に対応



<2011年2月8日>
 LUX製トランスでの製作…EL34プッシュプル

 下記WE350Bアンプ完成後にスグ着手したのがコレです。
LUXの回路で50CA10を使用した20年以上も前の熟練素人さん製作アンプから、そのLUX製トランスのみを使ってEL34プッシュプルに作り替えました。
予算の都合から入力グリッドチョークによる位相反転はせず、回路図において上の出力管のグリッドリーク抵抗を分圧して逆位相の(アンプの)入力信号と同じ信号電圧を得る『古典型反転回路』と云う方式、但しそこはサウンドパーツ流に出力管用<GCH-60>グリッドチョークを併用して出力管への入力信号のバランスを完璧に整えています。これは実に巧妙…と自画自賛、間もなく発売の<ITT5B/255Mプッシュプル>に使うべく実証実験を終えての採用です。回路名称は何だか古臭い『クラシック反転』でもWEや欧州(QUADUも然り)の業務用にも多く用いられて、私はP/K分割反転やリーク・ムラード型反転回路よりも優れていると思っています。中には下の初段球(この場合はCV4068と云うEcc32相当のMT球)に1度は上の球を通った信号が再入力される…と変な理屈をコネて嫌がる方もあるのですが、P/K分割はカソードから信号を取り出すのがイヤ…リークムラードは前にもう1段必要なのでゲインが多過ぎる上にNF必須となるのでイヤ…と云う方もあるのです。
でも市場の多極管プッシュの多くはそれらの位相反転段が席巻、その回路固有の音になるのを私は嫌います。出力管グリッドチョークを用いれば出力管のグリッド回路としては大変ゼイタクなだけに留まらずプッシュを構成するEL34のグリッドに入力する信号を磁気結合で正確に上下2分していますから測定でも大変良い結果が出ます。
 パワートランスの電圧が400V/360Vと高過ぎて、そのままだとこう言うのはナンですがパワー至上主義に見えるLUXさんエアタイトさんウエスギさんのアンプと同じ音の傾向となるのは望むトコロではありません。そこでチョークはヘンリー不足の5Hでもチョークインプットで適正電圧を得ることを狙います。
 欧州の著名なクラングフィルム・テレフンケンなどのモニター用のアンプに実質プレート電圧400Vを超えるアンプは稀…600Vもの高圧を掛けたB級動作のアンプも多くありますがそれは大きなパワーが必要なPA用とか大ホールなどで使用するためのもの、オーディオには映画館用ではなく録音現場のモニター用として使われたアンプを参考にすべきなのです。オーディオ用にEL34のプレートに500Vもの高い電圧を掛けたのはマランツが最初――測定上はともかくマランツからは豊かな低域…は望むべくもなく、それ以前の業務用アンプメーカーはEL34を良く知っていてパワーを優先するよりもEL34の『美味しい』使い方を心得ていたのです。
 本来チョークインプットでは10Hくらいが必要、その場合AC電圧400Vの理論値90%―実際には85%ほどの340Vが得られるのですが、5Hでは経験からチョークインプットとコンデンサーインプットの中間の動作…になると考えました。これは或る意味大変危険です。と云うのはもしオーナーが出力管を装着せずにONしてしまうとコンデンサーインプットの理論値√2倍の560Vに達して電解コンデンサーがすっ飛びます。そこでPTにヒーター端子が余っているのを幸いダンパ管<6AU4>を用いることに急遽変更、元々コンデンサー用に開けてしまったシャーシー上の2個中1個の穴を転用、横に密着する電解コンデンサーの背丈は小さいものを選んで熱から逃げるコトになりました。結果は電圧上昇まで40秒近く、400Vから<6AU4>出力で355Vと理想の電圧を得ることができました。つまり400V端子からダイオード両波整流後に<6AU4>を通じてユックリB電圧が上昇、約89%の値が得られたことになります。なお<6AU4>はマランツ2では2本使って両波整流しています。今や傍熱整流管の代表5AR4/GZ34は大変高価と云うだけでなく将来の入手が危ぶまれます。ダンパ管は安価でこのようなタイマー的使用は定格から見て極めてやさしい用法です。
 ハナシが横道にそれますが、チョークインプットがコンデンサーインプットに比べて優秀と云う訳ではありません。パワートランスに電流容量が無い場合とか、動作がB級に近くて出力の変化が大きく電流値に影響するアンプには向くと考えられます。PT/CHとも振動とかウナリが出る場合もあり、このアンプのPTはサビ落としのため分解した際に十分な締めつけをしていますが、アンプを置く台によっては少し唸るそうです(店内では全く感じませんでした)。
 かくして外観の大きなOY36/5を有効に用いてEL34/UL結合+センターチョークのアンプは50CA10を聴きなれた慣れたオーナーの元で働きだしました。50CA10に500V近いプレート電圧を掛けてNFBで特性を整えたやや薄味て淡泊な傾向を感じたものと同じトランスとは思えない表情を見せ、ともすればベールを何枚も被ったイメージの強い同社のアンプとは全く次元の異なるスピード感溢れる歯切れの良さと奥行き表現も上手い良いアンプとなりました。 多くの方は音は出力管で決まる…とお考えかも知れませんが、実はドライバー球の音を何倍にもしているのも出力管、ドライバー段の設計が大きく音質を決めるのがNON-NFBアンプの特徴です。ドライバー球に与えられるB電圧の半分以下のプレート電圧(つまり負荷抵抗に対し真空管の実質内部抵抗を十分に低くとる)とし、グリッドチョーク使用の場合ではカソード電圧の最低約3倍のプレート電圧から高い部分にプレート電圧を設定するところに味わいがあります。設計段階からは無論、完成後にも電圧を微調整しますからアンプ作りは「完成後に始まる」のです…が実際にはほとんどが設計通りに動作します。
 EL34球以外で製作に要した費用はMONO1台に付き8万円ほど、3tアルミ天板はゴールドの市販スプレーによるアクリル塗装です。

   

    



<2011年2月3日>
 WE350Bプッシュプル

     

  

 昨年秋から今年1月まで実は多くの特注プリ・EQアンプ・古典管シングルやプッシュのアンプを手掛けましたが、その多くはOEM用とか販売目的での製作依頼でしたのでこのページではご紹介できませんでした。当方製品も併せると年間50セット以上製作しますので、恐らくは日本で最も多くの真空管アンプを製作しているのではないか…と思います。
 今回は私としてはおよそ10年ぶりのWE350Bのプッシュプルのご依頼、トランスはオーナーが20年以上も持ち続け、70年も前に作られたと云う<LANGEVIN>のものです。この和訳はそのままランゲビンと云う方もあればランジバンとも言われます。カナダの会社だそうですが、当方でも創業の富山時代、約25年前にWestrex・RCAなどと共にラインアンプを多く手掛けています。でもLAGEVINのライントランスは意外に断線もすることが多くて、結構泣かされたものです。UTCのAで始まるトランスも要注意で、プリ用OPTなどは定格を信じてDCを流すと2年も持たないことがあります。
 提供されたPT/CH/OPT/INPUTは規格だけが判って端子に何が出ているかは全く不明、インプットは150+150Ω:65000Ω、OPTは一次6800ppに対し二次2/8/16/32/150/600Ωの仕様です。端子数は全部で20個ほどあって、まるでパズルのような具合です。
インプットトランス408はMCトランスとして使ってもゲインが有り過ぎるほど、とてもパワーアンプに使えるモノではありません。妙に稼ぐと音はコレで決まってしまいます。OPTも含めて経験のある方なら発振器とテスターだけでどんな巻線の予想は付きますがそのチェックに半日、インプットは入力反転用にグリッドチョークとして一次を二次巻線に直列で使うことにしました。シャーシーはタカチが今も作り続ける旧鈴蘭堂のSL10(タカチSRDSL-10)用に特別に作ってある3_厚の天板を加工しました。PTは110〜120V用でしたが100Vにても何とかヒーター用巻線も「誤差の範囲」として使えます。B+電圧は実測で380/400VとWE350B用にはとても向かない値ですので、7.5Hのチョークで「チョークインプット」として400V端子⇒GZ34⇒CH(DC:Ω160)⇒150μF⇒75Ω⇒820μFにて295V程度となりました。WE350Bを長寿で使うにはスクリーン電圧を270V以下で使わねばなりません。ちなみにWE124アンプは大出力だけが狙いのアンプなので、WEの指示通りの電圧を守ると多用する方では球は3年持ちません。当時はタマも安かったので消耗よりもパワーを選んだ設計なのです。規定通り流し管理を怠るとOPTの171Dの断線に泣くことになります。
 回路は全2段で当店独自の<完全バランスプッシュプル>、当初は12AY7を初段に用いる設計で出力段にはグリッドチョークGCH-60を入れて完璧を期しました。RK=220Ωにて17V〜18V(スクリーン電流を含む)ですが、OPTにULタップは無いので出力段のプレートから初段の各カソードに軽度のNFBを掛けています。350Bの場合スクリーン電圧はかなりプレート電流に影響し、この場合で245V程度の設定です。OPTの317Aの特性は20kHzから上がドンドン上昇する傾向で、NFBに補正を加えないと使えず、方形波観測で多重NFBみたいにキッチリ角のある波型にすると音はカッキンコッキンですからオーバーシュート程度に、これでサインカーブでかなり高域まで追って観測しても全く問題はありません。結局トータルとしては15〜40kHzがほぼフラットと云う特性、パワーは13.8W/ピーク27.6Wで家庭ではあり余る値です。完成後12AY7ではゲインが大きいので、オーナーが別に保有するE80ccにも差し替え可能なコトを確認、初段はE80ccに落ち着きました。OPTにセンターチョークは敢えて入れませんでしたがソコはさすがにWE350Bで奥行きの表現も良く、重心は低いのにヴァイオリンや声楽も堪能できる独特の音がありました。この音の傾向は電源部に大容量を投入したこととE80ccに依るところも大きいと思います。
 これで今までシングルアンプが中心だったオーナーは大変ご満足されたようです。

 ちなみにこのアンプの製作に要した費用は2台で20万円弱でした。内技術料は@4万円で、結局トランス測定などに要した費用はオマケ、総額が高いかどうかは知りませんがソケットや端子板などの部品もオーナー手持ちのものを使っています。信頼度の高い部品とシッカリしたボディ、グリッドチョークなど大切な球を守りつつ音質の向上にも役立つ部品を使えば、やや高めに映る投資ですが長期間楽しめる本当に優れたアンプが完成します。安価なアンプは巷に溢れていますが、10年も経てばプリント基板も錆びてくるような内部、1m数円の線材やどこで作ったか判らないトランス、オーバーオールのNFBでどれを聴いても同じようなペッタリと平板な音質のアンプと比べると費用以上の納得できるアンプが作れます。WE350Bは大変高価ですが、他にもまだまだ優れた球は入手できます。WE350Bの代替としてはあらゆる6L6が使えます。今回ご提供の球8本中2本は電流が規定の半分にも関わらず外観はほぼ新品でした。無論ピンのハンダ修正などあらゆるテクニックを試みても電流値は改善されず、オーナーは恐らく2本10万円程度は損害を被ったと思われます。

 このアンプの後、今はLUXのPT/CH/OPT(OY36-5)でMONO×2台を製作中です。元々は50CA10を使用したベテランの手になるアンプだったのですが、回路はリーク・ムラード型・多重NFBのもので、ハッキリ申して球に関わらず同じ音しかしない性格です。実はLUXが好んで使った50CA10/6CA10や8045Gはプレート電圧を低くして3極管の特性の良さを生かしたNON-NFBのプッシュを作れば結構イケる音なのです。今回は球の入手に困らないようEL34での製作です。さてどのような音となるでしょう?…PTの電圧が高いのでまたもやチョークインプットの電源となります。


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サウンドパーツ開発部品(グリッドチョークなど)/雑談/アンプ資料室/『WE300Bを作る』を別ページに独立@〜D連載中